29 『真夏の正夢』
「あたし、ね。カナダに行く。だから、いま。お願い……」
うわっ!
俺は、タオルケットを蹴っ飛ばしながら飛び起きる。
首の辺りに、嫌な汗をかいていた。
俺は、そんな夢を見た。
これって、いったい……?
夢に出て来たのは、もちろんアイツだった。
アイツは、いつも言っていた。
そのうち、世界中を回る長い旅に出るんだ!って。
あるとき、俺は。
アイツに冗談半分で、こう言ったんだ。
「じゃあさ、その旅に出る前に……一回だけでいいから、お願い!」って。
アイツは、笑いながらこう言った。
「あはは!こちらこそ、よろしくお願いします!」って。
俺は、なんでこんな夢を見たんだろう?
もしかしたら。
本当に、アイツはどこかに行ってしまうのかも……。
俺は、心配になって。
アイツに逢うために、走り出した。
そのとき。
冗談じゃなくて。
俺は本当に、アイツのことが欲しいんだって気付いたんだ。
『真夏の正夢』
了