22 『ただいま、と君は言った』


ある夏の日。


午後7時22分。


突然、ぼくのケータイにメールが入った。



えっ?



それは、一年前にぼくの元を去ったアイツからのメールだった。



どうして、いまさら……?


ぼくは、少し焦りながらメール本文を読む。



アイツとは、一年前に辛い別れをした。



ぼくは、本気でアイツが好きになって。


でも、縛られたくないと言うアイツが、ほかの男に逢うのが辛くて。



硬直した関係が、お互いにキツかったんだ。


そして。


結局アイツは、俺の元から去って行った。



それっきり、アイツとは話もしていない。



「……いま品川にいます。食事でもいかが?」



いったいアイツは、何を考えているんだろう?


アイツを忘れるために、俺がどれだけ辛かったか……。



でも。


それは、ぼく自身のせいでもあるんだ。


だから……。



ぼくは、仕事を切り上げてアイツのところへと向かうことにした。


ちゃんと、気持ちの整理を付けたい。


ぼくは、そう思っていたんだ。



品川駅のジューススタンドで、アイツはプラムジュースを飲みながら待っていた。



そして。


ぼくを見つけたアイツは、あの頃のように満面の笑みを浮かべた。


そのとき。


ぼくも、自然に笑えていたんだ。



この一年。


君に、何があったのか。


誰のことが、好きだったのか。


ぼくは、全部知っていた。



ぼくは。


君のブログや日記を、辛くても見ていたからね。



ぼくは、君を忘れようと頑張ったけれど。


やっぱり、それは無理だったみたいだ。



ぼくはあの時、未練がましく君にメールしたよね。


君を完全に失うのだけは絶対にイヤだ、って。



そして、いま。


君は、その返事をぼくにくれた。



未来はどうなるか、分からないけれど。


ぼくたちは、一年という時間を置いて。


落ち着いて、向かい合えた。



そして。


二人の時間は、今また動き出したんだ。



『ただいま、と君は言った』