9 『青空』


私は、雨がキライ。


いつも、思っていた。


どうして、大切なときに限って、いつも……。



みんなは、私のことをこう呼ぶ。


そう。


「雨女」って。



その日。


傘なしで出かけた私は、途方に暮れていた。


あなたと、初めてのデートなのに。



傘なしでは、歩けないほどの雨になっていた。


私は、右手に巻いた時計を見る。


待ち合わせまで、あと3分!


待ち合わせをしたカフェの、すぐそばまで来たのに。



彼に「私って、雨女なんだよね!」なんて、言わなきゃ良かった……。


私は、無意識に爪を咬んだ。



シャッターの閉まった、お店の軒先で。


私は雨を避けながら恨めしそうに、灰色の空を見上げていた。



そのとき。


私の目の前に、真っ青な空が広がった。



そばに立っている人の顔を見る。



あっ、彼だ!



「曇り空みたいな顔しちゃってさ。どうしたの?」


彼は、そう言って優しく微笑む。



彼が差し出した傘の内側には、青空と真っ白い雲が描かれていた。



いま。


私の目の前には、そんな青空が広がっている。



「何だって、さ。気持ちの持ちようなんだよ」と、彼は言った。



そうだよね。


私は心の中で、そうつぶやく。



私は、雨女なんかじゃないんだ!


そう考えることが、出来れば。


きっと、雨が降っていたことも、忘れることが出来るんだ。


きっと、晴れた日のことだけを思い出すことが出来るんだ。


私は、彼の顔を見上げながらニッコリと笑った。



「ほらね!」


そう言いながら彼がどけた傘の先には、本当の青空が広がっていた。



『青空』