7 『約束』
「あたし、やっぱり行くことにしたわ、ハリウッド!」
へっ?
ひ、独りで行っちゃうわけ?
キミの突然の宣言に、気弱なボクはちょっとガッカリしていた。
なんとなく、そんな気はしてたんだ。
でもボクは、そうならないんじゃないかって、少しだけ期待していたんだけど……。
今度のGWは、ボクの両親にキミを紹介するって約束してた。
だけど、それも無理というわけだよね。
ボクは、ひとつため息をついて途方に暮れる。
まぁ、そうなるような気もしてたんだけど、さ。
メイキャップアーティストとしてのキミの実力は、ボクはよく知らないけど。
それだけのやる気と自信があるならば、きっと今以上に成功するんだろうね、キミは。
ボクは、キミとの結婚を望んだけど、キミは仕事を選んだということだよね。
ボクは。
キミの幸せを考えたとき、ハリウッドに行くな!なんて、とてもじゃないけど言えなかったよ。
ボクが幸せにする!なんて、とてもじゃないけど言えないじゃないか。
「GWが終わったら帰ってくるからっ!」って、キミは笑った。
まぁ、仕方ない、か。
ボクは、のんびりとキミの帰りを待つよ。
ボクは取り柄のない、ただの男だけど。
誰にも負けないって自信あることが、ひとつだけあるんだ。
それは。
キミを愛してるっていうこの気持ち。
だから、きっと大丈夫。
そして。
キミは、ハリウッドに旅立って行った。
それから。
約束通り、キミはGWが終わった頃、ボクのそばにひょっこり帰って来た。
「ただいま!」
キミは、ボクをギュッと抱きしめた。
……まぁいいか。
「お帰り!」と、ボクはキミの髪を撫でた。
キミは、今度はちゃんと約束を守ったわけだ。
しかし。
あれから、何度目のGWだと思ってるんだよ、まったく!
ボクとキミは、あれから6つ歳を取った。
でも。
幸か不幸か、まだまだボクたちの人生は長い。
時間は、人を変える。
ボクはキミの瞳を見つめながら、ひとつため息をついた。
『約束』
了