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その夜。


俺は、初めて麻里恵を抱いた。



この先、麻里恵が遠くに行ってしまうとしても。


いま、この瞬間を一緒に過ごせることが幸せなのだ。



いま、俺たちは。


間違いなく、ひとつに溶け合っていた。


この瞬間。


いや、このあとだってずっと。


幸せは続く。


ただ、そう信じていれば良いのだ。



結果なんて心配しても、仕方がない。


ただ。


麻里恵を大切にしたい、というこの気持ち。


その気持ちを、大切に思うことが。


俺の望む愛なのだ、といま気づいた。



俺と麻里恵は、ギャグをとばし合いながら、ベッドの上で裸でじゃれあった。


1994年のクリスマスイヴは、そんな風に過ぎて行った。



1995年が明けてすぐ、俺たちは新宿の富久町に古い一軒家を借りた。


俺と麻里恵の、ふたりだけの生活が始まった。



俺は初めて麻里恵を、東京に居るふたりの妹に「俺の彼女だ」と紹介した。


そして。


初めて、麻里恵の両親に挨拶に行った。



俺は、思う。


今までの俺は、どれだけいいかげんな恋愛をして来てしまったのだろう?


しかし。


そんなことをいまさら悔いても、もう仕方ないのだ。



麻里恵との暮らしは、穏やかに過ぎて行った。


笑いが絶えない時間。


それこそが、俺が本当に求めていたものだと気づいた。



そして。


麻里恵は、ハリウッドに旅立って行く。


俺は、ニッコリと笑いながら麻里恵を見送る。



先のことなんて、誰にも分からない。



春の青空に、麻里恵の乗った飛行機がキラキラしながら消えて行った。



俺はただ、この瞬間をしっかりと生きる。


そう信じて、そう動こうとすることができれば。


きっと人生は、ずっと楽しいに違いない。



俺は成田空港の展望デッキから真っ青な空を見上げながら、そんな気がしていた。




『恋愛小節1994』



Copyright by 出雲 裕雪




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