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麻里恵は、長い沈黙の後、うんっと頷いてこう言った。
「あたしだって、ひろさんのことが大好きだよ。でも……、春には遠くに行っちゃうから、あたし……」
俺は、思わず麻里恵をギュッと抱きしめていた。
そのとき。
俺は、思った。
たとえ春までだったとしても、一緒に居ればいいんだ。
そうしたい。
いや。
俺は、そうしなければならない気がしていた。
俺は麻里恵を抱きしめたまま、ゆっくりと口を開く。
「麻里恵、もう一度言う。俺は、お前を本気で愛してる。分かるよな?」
麻里恵は濡れた瞳で、じっと俺の目を見つめた。
そして、麻里恵はゆっくりと頷いた。
長い時間、俺たちは見つめ合っていた。
俺は、思った。
いま、この瞬間を大切にしたいって。
奥尻島で、見た景色。
逝ってしまった、リカのこと。
そして。
栞や弥生、真由子、冬子への気持ち。
俺は。
いま、この瞬間を生きる。
そして。
何かを、残したい。
ずっと心に秘めていた思いを、いま再び強く感じていた。
だから。
俺は、麻里恵の夢を奪いはしない。
しかし……。
俺は麻里恵の目を、まっすぐしっかりと見つめながらこう言った。
「一緒に居られる間は、一緒に居よう。お前がイヤだと言ってもダメだよ、麻里恵……」
俺はニッコリと笑いながら、麻里恵の涙を拭いた。
麻里恵は、少し驚いたように俺の顔を見つめていた。
そのとき。
俺の左手に巻いたG-SHOCKのアラームがピピッと鳴った。
それは。
12月24日0時の時報だった。