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麻里恵の、部屋のなかで。


俺たちは、ベッドに並んで腰掛けながら話をしていた。



もはや。


俺たちには、駆け引きなんて必要ない。


お互いの気持ちを、正直にぶつけるだけだ。



「……麻里恵、俺の気持ちは分かってるよね?」


麻里恵は、正面を向いたままコクリとうなずいた。



そして。


少しの沈黙のあと、麻里恵は言った。


「わたしだって、ひろさんが大好きだよ。でも……」



俺のほうにゆっくりと向きながら、麻里恵は俺の目をじっと見た。


その瞳は、涙で潤んでいる。



麻里恵……。


俺は、今までに感じたことがなかったほどの愛おしさを感じていた。


そのとき、俺は思った。


絶対に俺は、この女を失いたくはない。



俺は、左に向きながら麻里恵をギュッと抱きしめる。


「アッ、ダメ……」と、麻里恵がささやくように言った。



「麻里恵……。どうしても俺と一緒には居られないの?……いや、どうしてなのか教えて欲しいんだ」


俺は、そう麻里恵の耳元でささやいた。



長い沈黙のあと、麻里恵がゆっくりと口を開く。


「……あたし、もうすぐ遠くに行っちゃうんだよ。ハリウッドに、メイクの勉強に行く……」



俺は、麻里恵のそんな言葉に動揺していた。


それは。


予想していた中でも、最悪の答えだった。



それって、ずっと麻里恵の夢だったんだよな、きっと。


俺は麻里恵を抱きしめながら、そんなことを考えていた。