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「麻里恵さんに近づかないでくれませんか?」と、くみは思いのほか強い調子で言った。


えっ?


俺は、麻里恵とくみの仲を邪推する。


そうなのか?


ホントに、そうなのか……?



俺は動揺を隠すように、ジンジャーエールを飲み干した。


「……どうしてだよ、くみ。そんなに麻里恵のことが好きなの?」


俺は、そんな言葉でくみを問い詰めた。


「……はい。大好きですよ。だから、麻里恵さんを苦しめて欲しくないんです……」


くみと麻里恵が怪しい関係である、というわけではないらしい。



やはり。


麻里恵には、何かがあるのだ。



「……麻里恵さんは、ひろさんのこと好きだと思います!でも……」


結局、くみは詳しい事情を教えてはくれなかった。


しかし。


麻里恵は、俺と一緒に居たくても居られない何らかの理由を抱えているのだ。


幸いなことに、どうもそれは。


男絡みのことでは、なさそうだった。



俺は、いま。


麻里恵の本心と、俺と一緒に居られない理由を知りたくてたまらなかった。


俺は。


どんな理由があったとしても。


麻里恵のことを、諦めたくはない。



俺が麻里恵を、幸せにしたい。


自信があるわけではない。


しかし。


やっと俺は、そう思うことが出来たのだ。