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冬子は、今夜も無口だった。


というかそれは、きっと俺が無口だからに違いないが。



俺と冬子は、それでもたまに見つめ合いながら、世間話をした。


「……ねぇ。ひろってさぁ、最近あたしにあんまり興味ないでしょ?」


冬子は、寂しそうにそうポツリと言った。



俺は。


何も、言えなかった。



うつむき気味の俺は、思った。


俺って、情けない男だよな、と。


しかし。


このままでは、ダメだ。


俺は、冬子と終わるためにここに居るのだから。



俺は頭を上げて、まっすぐに冬子の目を見ながら口を開く。


「あのさ、冬子……俺、さぁ……」


そのとき。


「あたし、煮え切らない男ってキライ。あたしたち、もう終わりにしましょうよ……」


冬子は、そう言ってニッコリと笑った。



冬子……。


俺は心の痛みに耐えながらも、冬子に感謝していた。


冬子は。


やはり、いい女だった。


冬子は、いまの俺の気持ちを理解したのだ。



俺は、自分の情けなさを恨む。


真由子にしても、冬子にしても。


俺が少し努力すれば、愛することなんて出来たはずなのに……。



「じゃあ、元気でね!」


そう言って歩き去る冬子の背中が震えていた。


冬子は、泣いていたのだ。



俺は、振り向かない冬子に頭を下げた。


「ありがとう、冬子」


俺は無意識に、そうつぶやいていた。