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俺は気が抜けたようになりながら、小田急線に乗り、そのまま新宿に出た。



左手に巻いた、シルバーのROLEX OYSTER PERPETUAL DATEJUST 1601を見る。


針は、午後10時19分を指していた。



俺はIDOの携帯を取り出して、冬子の携帯に電話をかける。


俺は、西口のロータリーからわずかに見える空を見上げた。


真冬の空が、そこにはあった。



長い呼び出し音の後、留守電になる。


今日は、やっぱり無理だよな……。


俺は、少しホッとしていた。



出来ればこのまま今日、冬子とも決着を着けたかったのだ。


しかし。


確かにそれは、気が重い。



それに。


小説でもあるまいし、そんなに都合良く話は進まないのだ。



何度目かで、ライターに火が点いた。


俺は、山手線のホームでタバコに火を点ける。


メリットライトの青紫色の煙が、まっすぐ上に登って行った。



寒い、な……。


俺は、立て続けに二本目のメリットライトに火を点けようとした。


カランダッシュのライターは、今日も火の点きが悪い。


俺は、苦笑いしながらやっとのことで火を点けた。



使いづらいなら、使わなければ良い。


しかし。


このライターには、愛着があるのだ。



……もしかしたら、人間の関係だって同じなのかもしれない、な。


俺は、ふとそんなことを思う。



完璧な女なんて、どこにもいない。


ダメな俺が、何を望むというのだ?



俺は、真由子のことを少し後悔していた。


しかし。


もう真由子とのことは、過去なのだ。



そんなことを考えていた、そのとき。


俺の携帯に、電話が入った。