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その日のロケは、順調に進んだ。
いや。
進んだというか、進めたというか。
とにかく俺は、着々とスケジュールをこなした。
仕事を終えた俺が会社を出たのは、午後6時過ぎだった。
早く終わって、よかった!
そう思いながら俺は、麻里恵の携帯に電話をかける。
今度は、数コールでつながった。
「おーい!大丈夫か?麻里恵!」
俺は、少し焦りながらそう言った。
「……うん。大丈夫だよ。ありがとう、ひろさん……」
麻里恵は、いつもよりか細い声で、そう言った。
「あのさぁ。これから行くから、お前の部屋。何が欲しい?」
俺は有無を言わさない感じで、麻里恵にそう言っていた。
あれっ?
俺らしく、ないな……。
苦笑いしながら俺は、自分の気持ちに驚いていた。
確かに、いつもとは違って、俺は冷静ではいられなかったのだ。
15分後。
俺は、麻里恵の部屋にいた。
パンやスープといった簡単な食事と、風邪に効くという栄養ドリンクも買った。
麻里恵は、やはり風邪をひいたようだ。
「ああ、まだちょっと熱があるよね。すぐ帰るから、ゆっくり寝てろよ、なっ!」
俺は麻里恵のおでこに手を当てながら、そう言った。
「……冷たくて、気持ちいい……」と、麻里恵はつぶやいた。
そのとき俺は、少しホッとしていた。
俺は、かなりの心配症だ。
特に、愛する女に対しては。