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その日は、夕方に麻里恵の家を出た。


このままずっと、麻里恵と一緒にいるのはマズいと思ったからだ。


そのときの俺は、まだ自分の気持ちが整理出来ていなかった。


俺は、やはり不安だったのだ。



俺は、独り自分の部屋で夜を過ごす。


ドクターペッパーに、ガーリック味のポテトチップス。


それが、今夜の夕食だ。



麻里恵は、俺を愛してくれるだろうか?


そのとき。


俺は、そんなどうしようもないことを考えていた。



俺は。


いま、勇気がなかった。


いま、自信がなかった。



冬子や真由子のときとは明らかに違う、こんな気持ち。


俺は、天井を向いて考える。


俺は、いったいどうすれば良いのだろう?



俺は今まで一度だって、誰かに悩みの相談をしたことはない。


冬子に相談するフリをしたことはあるが、本心から頼ろうと考えたことなんてないのだ。


唯一の親友、タカシにだって、一度もなかった。



俺は、自分のことは自分で決める。


ずっと、そうしてきた。


だから。


今回のことだって……。



次の日は、またロケだ。


そして。


また現場で、麻里恵に逢えるだろう。



俺は麻里恵の笑顔を思い出しながら、ドクターペッパーを飲み干した。