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麻里恵は少し照れながら、でも真剣な表情でそう言った。


麻里恵は、俺の目をじっと見る。


俺は、麻里恵のそんな言葉と仕草に、ガラにもなくドキドキしていた。



俺と麻里恵は、そんな感じでのんびりと夜を過ごす。


麻里恵の部屋にある14インチのテレビには、字幕版の古いフランス映画が映っている。


音声が、薄く流れていた。


なんとなくフランス語を聞き流しながら、俺たちはゆっくりとした時間を過ごす。



なんだか、気持ちいいな。


少し眠くなってきた俺は、そんな風に感じていた。


そのとき。


俺は、不思議な感覚を覚えていた。



麻里恵は、たぶん俺の好みのタイプではない。


しかし。


一緒にいると、楽しくて。


そして。


こんなにも、心が穏やかになる。


初めて、ふたりだけの時間を過ごしているのに。


まるで。


昔から、知っているみたいだ。



俺は、そのとき自分の気持ちに正直戸惑っていた。


麻里恵を手に入れたい。


しかし。


俺は、やはり自信がなかったのだ。



俺は、すでに麻里恵のことが大切だと感じていた。


けっして失いたくはない、大事な存在。


しかし……。



「ねぇ、そろそろ寝る?……一緒にベッドで寝てもいいよ……」と、麻里恵は言った。