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その夜。
俺と麻里恵は、くだらない話をしながら過ごした。
俺は、新聞広告の裏が真っ白だと嬉しい。
それは、もちろん。
落書きが出来るからだ。
俺たちは、広告の裏に下らないマンガを書きながら笑い合った。
「これ分かる?昔流行った、おふうっていうぬいぐるみ知ってる?」
俺は、フワフワの真っ白いフクロウのキャラクターの絵を書いた。
昔、恭子が好きだったんだっけ?
そんなことは、どうでもいいが。
「あれっ?麻里恵ちゃん、酒飲まないの?飲めないわけじゃないよね?」
「うん。飲めるけど、毎日飲むほど好きってわけじゃないし」と、麻里恵は笑った。
この子は、きっと俺に気を使ってくれているんだ……。
俺は、まだ麻里恵に酒を一切飲まないとは話してはいない。
それなのに。
ずっとスプライトを飲んでいた俺から察して、ちゃんと心使いをしてくれる。
俺は楽しそうに笑う麻里恵を、思わずじっと見つめていた。
「何?わたしの顔って、そんなに面白い?」と、麻里恵は言った。
「うん、わりと……。嘘だよ……俺、かわいいって思ってるお前のこと。いや、マジで!」
俺は、半分冗談に聞こえるように、麻里恵にそう伝えた。
「……うん、わたしも思ってる。……ひろさんって、かわいいって……」