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麻里恵の部屋は1DKバストイレ別の、かなり高級なマンションだった。
俺の部屋の、倍くらい広い。
新宿からさらに内側に入った場所だから、家賃はかなり高いだろう。
俺は、キョロキョロと落ち着きなく部屋の中を見回していた。
「……はーい、お待たせ!ごめんね、こんなもので」
そう言いながら麻里恵は、アツアツのラザニアを鍋ごと運んできた。
うん!
旨い!
パパっと作った割には、それはちゃんとしたラザニアだった。
やはり、コイツは出来る!
麻里恵はニコニコしながら、ラザニアを食べる俺を見ていた。
麻里恵は、じっとひとの目を見て話す女だ。
仕事中の麻里恵は、相手の言葉を一言も聞き漏らさないようにしていた。
そんな真剣な態度が、きっとそんな風にさせるのだろう。
俺は、そんな麻里恵に好意を持っていた。
そうじゃなきゃ、ここにはいない。
そして、いま。
俺の目の前にいる麻里恵は、やはりじっと俺の目を見つめていた。
俺は、ガラにもなくテレた。
あれっ?
俺は、いつもと違う自分の感情に戸惑う。
麻里恵は、けっして美人ではない。
しかし。
きっと、一緒にいると楽しいだろうな……。
あれっ?
何考えてるんだ、俺は!
苦笑いしながら、俺は麻里恵を見る。
「美味しい?うん、良かった!」
返事も聞かずに麻里恵は、そう言った。
そのとき、俺は。
もうすでに、麻里恵にヤラれていたのかもしれない。