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俺は、弥生を抱いたことを後悔していた。
結局、それは俺の心に忘れられない傷を残した。
そして。
もしかしたら、弥生だって同じかもしれないのだ。
そんな風になってしまうことは、分かっていたのに……。
それがやはり、俺のダメなところだ。
1994年の、クリスマスが近づいていた。
俺は、きっと。
冬子や真由子や、きっとまた別の女とも。
別々に、クリスマスの夜を過ごすのだ。
陽子を失って、もう一年が経とうとしていた。
俺は。
この一年いったい何をしていたのだろうか?
でも。
そんなことは、考えても仕方ない。
俺は、デスクの仕事に追われながら、バタバタした12月を過ごす。
そんな中でも、たまにはカメラマンとして現場に行くこともあった。
あの日。
俺は、いつものように、バラエティー番組のロケで原宿にいた。
今日のロケは、表参道を歩きながら、タレントが街行くひとに絡むというものだ。
今日も寒いな……。
俺は、ラフォーレ前のベンチに座って、今日の予定表に目を通していた。
そのとき。
「あっ、おはようございます!今日メークで入ります、森野です。よろしくお願いします!」
そんな風に明るく声をかけて来た女。
それが。
俺と麻里恵との、運命の出逢いだった。