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今夜の冬子は、いつもと違ってゆっくりとカクテルを飲んでいた。


冬子は、いつもハイペースで酒を飲む。


しかも、いつも強めの酒を、だ。


だから、結局いつも冬子は酔っ払っていた。



俺は、酔っている女を抱くのは好きではない。


出来ることならば、シラフのほうがいいに決まっている。



冬子とは、それほど体を重ねたわけではないが、確かにいつも冬子は、かなり酔っていた。



「なぁ冬子……。お願いがあるんだけど」と、俺は言った。


冬子は小首をかしげながら、俺の目を見つめていた。


「あのさ、今夜は……あまり飲まないで欲しいんだ。って言うか、今夜はあまり飲まないつもりだろうけど、さ」


冬子は自分のグラスを指差して、艶やかに微笑みながらうなずく。


「そう。分かってる。今夜は、シラフで……」



以心伝心、だな。



俺は苦笑いしながら、冬子の右手を優しく握った。



店を出た俺と冬子は、ポルシェで浦安を目指す。


今夜は、冬子の部屋ではない場所に行きたかったからだ。



俺たちは、首都高を浦安インターで降りて、ディズニーランドの先にあるラブホテルに入る。


まぁ、どこにでもある普通のラブホだ。