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四年前。


栞は電話で、こう言った。


「お兄ちゃん……どこか遠くへ連れて行って……」と。



あの日。


俺は栞と、新宿駅西口交番の前で待ち合わせをした。


俺は、来ない栞を待ち続けた。


ずっと、ずっと……。



「……お兄ちゃん。あのとき、あたし……」


そう言いかけた栞の唇を、俺は人差し指で止める。



そして俺は、ゆっくりと栞の肩を抱く。


「酔ってるね、栞……マスター!彼女送って行くわ」



俺は、勘定を払って席を立つ。


店の出口に向かう俺に、栞がゆっくりと着いて来た。



店を出た俺と栞は、あの頃のように並んで歩く。


そのとき栞が、俺のひじに手を回してきた。


「……おいおい!妹はそんなことしちゃダメなんじゃないの?」


まるで、あの頃に戻ったようだ。


あの頃とわざと同じセリフを言う俺に、栞も応える。


「妹だから、いいんだも~ん!」と。



しかし。


俺のひじにぶら下がって歩く栞は、あの頃の栞ではないのだ。


俺は、栞の横顔を見る。


あの頃よりも確実に美しく成長した栞が、そこにいた。



栞……。


やはり、栞が愛おしい。


この四年、忘れられなかった女だ。


しかし……。