65
四年前。
栞は電話で、こう言った。
「お兄ちゃん……どこか遠くへ連れて行って……」と。
あの日。
俺は栞と、新宿駅西口交番の前で待ち合わせをした。
俺は、来ない栞を待ち続けた。
ずっと、ずっと……。
「……お兄ちゃん。あのとき、あたし……」
そう言いかけた栞の唇を、俺は人差し指で止める。
そして俺は、ゆっくりと栞の肩を抱く。
「酔ってるね、栞……マスター!彼女送って行くわ」
俺は、勘定を払って席を立つ。
店の出口に向かう俺に、栞がゆっくりと着いて来た。
店を出た俺と栞は、あの頃のように並んで歩く。
そのとき栞が、俺のひじに手を回してきた。
「……おいおい!妹はそんなことしちゃダメなんじゃないの?」
まるで、あの頃に戻ったようだ。
あの頃とわざと同じセリフを言う俺に、栞も応える。
「妹だから、いいんだも~ん!」と。
しかし。
俺のひじにぶら下がって歩く栞は、あの頃の栞ではないのだ。
俺は、栞の横顔を見る。
あの頃よりも確実に美しく成長した栞が、そこにいた。
栞……。
やはり、栞が愛おしい。
この四年、忘れられなかった女だ。
しかし……。