62


俺と栞は、カウンターに並んで座っていた。


まるで。


初めて逢った、あの大阪の夜のように。



偶然とは、恐ろしいものだ。


いま、このタイミングで。


俺と栞が、再び出逢うなんて……。



「……元気なのか?栞……」


俺は、元気そうに見える栞に、あえてそんなふうに声をかけていた。


「うん、もう大丈夫。あれからちょっと時間かかったけど、もう平気だよ」


栞は、あの頃と同じように微笑む。


しかし。


そんな表情が、急に曇った。


「お兄ちゃん……あたし、ずっとお兄ちゃんに謝りたいって思っていたの」


栞の大きな瞳に、涙が溜まっていた。



栞が俺に、最後に送ってきた手紙。


それには、俺を本当は好きではない、と書かれていた。


あの頃の俺は、栞のそんな言葉に我を失った。


しかし。


今ならば、栞の気持ちも分かるし、許すこともできる。



いや、本当は。


四年前のあの時だって、分かっていたのだ。


俺は栞を失った悲しみをごまかすために、栞を悪者にしたのだ。



「何も謝らなくてもいいよ、栞。謝るとしたら、俺のほうだ」


俺はそう言いながら、溢れ流れた栞の涙を親指で拭った。



やはり、すべては偶然などではなく、必然なのだ。


俺は、今このタイミングで。


栞に再び逢えた奇跡を、神に感謝していた。