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「栞……?本当に栞なのか?」
胸がドキドキして、息苦しい。
目の前に栞が存在するという事実が、俺には信じられなかった。
栞に逢いたいと、ずっと思っていた。
しかし。
こんな風に突然現れると、動揺する。
四年ぶりに逢った栞は、とても美しく成長していた。
俺は昔のように、しばらくの間、栞に見とれてしまっていた。
いや。
本当は、我を失って思考停止していたのかもしれない。
とにかく。
22歳になった栞は、本当にキレイだった。
「お兄ちゃん……ごめんなさい。本当にいろんな心配をかけたよね……」
俺の目の前にいて頭を下げているのは、本物の栞だった。
四年前。
俺は、栞という存在を失った。
本当は、俺は栞を愛していた。
しかし。
その気持ちを「栞は妹なんだから」という言葉でごまかそうとした。
そして。
俺は、栞を傷つけた。
栞が俺から離れて行ったのは、当たり前のことなのだ。
伝わらなければ、意味なんてない。
俺は、本当は栞を愛していたのに。
その気持ちを、俺は伝えないようにしたのだ。
俺には、そのとき沙樹子がいた。
しかし。
俺が栞を愛してしまったために、結果として沙樹子も栞も失ってしまったのだ。