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カメラマンという仕事が、好きだった。
俺の目を、みんなの目にしてやる!
そんな偉そうなことを考えながらも、俺は時代の一部を切り取ってきたつもりだ。
デスクになるということは、カメラマンとしてはほぼ終わりということだ。
俺は、サラリーマンだ。
もし本当にカメラマンを続けたければ、フリーになれば良い。
しかし。
それだけのリスクを犯してまで、本当にカメラマンを続けたいのだろうか?
俺は、本当は自信がなかったのだ。
俺という、一個人としての実力。
それがどれほどかは、なんとなく分かっていた。
実力がないわけではない、と思う。
しかし……。
俺は、やはり自信がなかったのだ。
そして。
それは、きっと女に対しても同じなのだ。
俺はジンジャーエールのグラスを傾けて、中に踊るライムをボーっと見ていた。
「……お兄ちゃん!お兄ちゃんってば」
えっ?
背中から抱きつかれた俺は、そのとき声で気づいていた。
弥生、か……。
胸の前に回された腕を、ゆっくりとほどきながら。
俺は弥生の手の甲に、無意識のうちに唇をつけていた。
「ホントに久しぶりだね、お兄ちゃん……」
俺は、ちょっとした違和感を感じていた。
まさか……。
振り向いた、そこにいた女。
それは、栞(しおり)だった。