58


マスターが投げてよこしたおしぼりで、手とカウンターを拭く。


やれやれ……。


苦笑いする俺に、マスターがこうつぶやいた。


「お前らしくないな……」



確かに。


俺は、マジで少しずつ我慢できなくなっていたのだ。


この状態から抜け出せない自分が、本当にイヤだった。



そして。


悪いことは、重なるものだ。



その頃、俺は仕事でも少しずつ立ち位置が変わってきていた。


つまり。


現場の仕事よりも、管理者としての仕事が増えていたのだ。


もちろん。


相変わらず、レギュラーの番組は持っていた。


しかし。


何もなければ、俺は土曜日のデスクを任されるようになっていた。



デスクというのは、俺たちの仕事の場合、現場の総責任者という重要なポジションだった。


翌日の仕事のラインナップは、夕方にほぼ確定する。



仕事の質、カメラマンとアシスタントの相性、スキル、そしてディレクターとの相性。


そういったことを総合的に判断し、約60班のクルーをコントロールする。


とっさの判断はもちろん、危機管理能力。


その他、就業スケジュールや健康、スキルの管理など。


あらゆることを統括して、コントロールする。



土曜デスクとはいえ、そういうポジションに足を突っ込むことになった。


俺は、今までのように自分の仕事だけをしていれば良いというわけには、いかなくなっていたのだ。