52
俺は、ニッコリと笑いながら話を続けた。
「そう言えばさぁ、こないだ付けてたピアスとブレスだけど、かわいかったね……」
「へぇ!良く見てるんだね。そうそう、あれ合わせてたんだよね!」
真由子は、そのときとても嬉しそうに笑った。
「うん。真由子って、センスいいなって思ってさ。カメラマンだから、いろんなところ見てるんだよね。見てないようで」
「いやだ、もう!」
真由子は、そう言いながら俺の手を握る。
なるほど。
仕草は素直なものだ。
それから俺は、真由子を少しずつ攻めていった。
真由子もそうだが、イイ女はいつも男からちやほやされているものだ。
だから。
たまには、冷たくしたほうが良い。
俺は、誉めたりダメ出ししたり、バランスを取りながら真由子の心を誘導する。
今夜、真由子を落とす。
俺は、そう決めていた。
「じゃあ、行こうか」
俺は真由子の手を取って、有無も言わさず店を出た。
10分後。
俺と真由子は、俺のポルシェ944の中にいた。
首都高に入った俺は、のんびりとポルシェを走らせる。
「ねぇ、どこに行くの?」
甘えた声で、そんな風に聞く真由子を無視しながら、俺はアクセルを踏み込んだ。