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俺は、ニッコリと笑いながら話を続けた。


「そう言えばさぁ、こないだ付けてたピアスとブレスだけど、かわいかったね……」


「へぇ!良く見てるんだね。そうそう、あれ合わせてたんだよね!」


真由子は、そのときとても嬉しそうに笑った。



「うん。真由子って、センスいいなって思ってさ。カメラマンだから、いろんなところ見てるんだよね。見てないようで」


「いやだ、もう!」


真由子は、そう言いながら俺の手を握る。



なるほど。


仕草は素直なものだ。



それから俺は、真由子を少しずつ攻めていった。


真由子もそうだが、イイ女はいつも男からちやほやされているものだ。


だから。


たまには、冷たくしたほうが良い。


俺は、誉めたりダメ出ししたり、バランスを取りながら真由子の心を誘導する。


今夜、真由子を落とす。


俺は、そう決めていた。



「じゃあ、行こうか」


俺は真由子の手を取って、有無も言わさず店を出た。



10分後。


俺と真由子は、俺のポルシェ944の中にいた。


首都高に入った俺は、のんびりとポルシェを走らせる。



「ねぇ、どこに行くの?」


甘えた声で、そんな風に聞く真由子を無視しながら、俺はアクセルを踏み込んだ。