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「久しぶりだね。逢いたかったよ、真由子……」
俺はカウンターの隣に座る真由子の目を、熱く見つめながら、そうささやいた。
真由子は、柔らかい微笑みをたたえながら、ゆっくりと俺を見る。
「えぇ。あたしも」
この前は太陽の下だったせいか、健康的な美しさの真由子の姿だった。
しかし。
今日は、この前みたいにラフなファッションではない。
黒いシースルーのシャツに黒革のミニスカート。
かなり刺激的だ。
俺は、真由子の指に優しく触れながら、ささやく。
「なぁ、真由子さぁ。今一番欲しい物ってなに?」
真由子は、小首を傾げながら少し考えているようだった。
そして、ゆっくりと口を開く。
「そうね。今欲しいのは……。別に何もない、かな……」
真由子のその言葉は、俺にとって意外だった。
たとえば。
仕事だったり、チャンスだったり。
男だったり、ぬくもりだったり。
陳腐だとしても、何かの答えが返ってくると思っていたのだ。
しかし。
真由子は、何もないと言う。
「俺は……ストレートに言えば、今夜おまえが欲しいけど、な」
俺は、早速勝負に出た。
ダメならダメでも良い勝負だ。
「あはは。イヤよ、そんなの!」
真由子の思いのほか強い拒絶が、俺のスイッチを入れた。
俺の心のなかで、悪魔がニヤリと笑った。