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「あのさ、弥生……。俺は、お前に何があったかは聞かないよ」


しばらくの静寂のあと、俺はそう口を開いた。


弥生は、涙に潤んだ瞳を真っ直ぐに俺に向けた。



「俺という存在が弥生にとって必要ならば、俺はそれに応えたいと思う」


弥生の表情が、パッと輝く。


「ただし、俺はお前と愛し合う訳にはいかないんだ。それが理解できるならば、の話だがな」



弥生は、俺の目を見つめながら少し考えているようだった。


そして。


弥生は、やがてゆっくりとうなずいた。



俺は、ホッとしていた。


しかし。


本当の気持ちを言えば、混乱していたのだ。



もしも。


俺が、弥生の本当の歳を知らなけば。


俺は、間違いなく弥生を抱いていたに違いない。



いま俺の腕のなかにいる弥生という存在は、本当は年齢なんかに関係なく、俺にとって大切なはずだった。



そんな、大切な存在だからこそ。


本当は、俺は抱かなければならないのに……。



しかし。


今の俺は、だからこそ弥生を抱く訳にはいかなかった。


なぜなら。


抱けば、弥生を間違いなく愛してしまうからだ。



俺は、そのときまだ、女を愛するつもりはなかったのだ。