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そんな、ある日のことだった。


夜遅く部屋に帰った俺は、玄関先に立つ誰かの姿を見つけた。



えっ?


弥生、か……。



俺は、左手に巻いたシルバーのROLEX OYSTER PERPETUAL DATEJUST 1601を見る。


針は、午前0時48分を指していた。


何度も言うが、俺はいつも時計の針を10分進めているが。



「……久しぶりだな、弥生。どうした?こんな時間に……」


弥生とは、あれ以来電話で何回か話したが、逢ってはいなかった。


そして。


最近は、電話がかかってくるペースも落ちていたのだ。



「お兄ちゃん……」


えっ?


そう言いながら弥生は、俺の胸に飛び込んで来た。



……お兄ちゃん、か。


俺は、弥生にそう呼ばれるのがイヤだった。


それは、俺のトラウマがそうさせるのだ。



栞……。


俺は、そのときまた、栞のことを思い出していた。



いい加減に、栞の呪縛から逃れたい。


俺は、そのときそう強く感じていた。



だから。


俺は、弥生をちゃんと受け入れることに決めたのだ。



弥生を強く抱きしめながら、優しく髪をなでる。


俺は、頬を流れる弥生の涙を親指で拭ってやりながら、ニッコリと微笑んで、こう言った。


「……今晩一緒にいてやるから……」



弥生は、俺の目を見ながらニッコリと笑った。