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そして。


他の男に、自分の女を寝取られたくらいでは。


もう俺のプライドは、傷ついたりなんてしないのだ。



陽子と別れた俺は、フラフラと池袋の街を歩く。



本当は、そうでないとしても。


俺のプライドは、もう傷ついたりはしないのだ。



そう考えることが出来るならば。


俺は、また新しい愛を手に入れるチャンスを得たということだ。



もう、それでいいじゃないか。



俺は、サンシャイン60を見上げながら誓う。


もっと、冷徹に。


もっと、冷静に。



俺は、そのとききっと、確実に壊れていたに違いない。


俺は、そう誓いながらも、ムダな夜を過ごし続けてしまうのだ。


そして。


冷徹に成りきれない俺は、滑稽だった。



弥生からは、たまに電話がかかってきた。


俺は、弥生に対しては、優しいヤツを演じていた。


ただし。


その関係は「お兄ちゃんと妹」的に展開するのだけはイヤだった。


俺は、過去にそれで失敗していたからだ。



栞(しおり)……。


俺は、今でも苦い思いと共に、その女の名前をつぶやくことがある。


もう、4年も経ったのに……。


俺は、弥生に栞を重ねているのだ。


それは。


否定したくても出来ない、真実だった。


男って、情けないよな。


俺は、自分で自分を笑った。


そして。


栞と同じように、陽子のことも引きずっていくのだ、きっと。