30


その日の夕方、俺は弥生を家まで送って行った。


弥生の家は、横浜のはずれにあった。


えっ、ここ?


そこは、とてつもなく大きな家だった。


すごい、な……。


俺は、その敷地の広さにマジで驚いていた。


こりゃ、庭でゴルフだってできそうだ!



弥生は、かなりのお嬢さまということか……。


俺は、あえてその辺りには触れないようにした。


弥生だって、そんな話をされても楽しくないだろう。



俺は、家の門の近くにポルシェを止めた。


車の外に出て、弥生と向かい合う。



「ひろさん、ありがとう。またすぐに逢ってよね!」


そう言って弥生は、背伸びをしながら、俺の頬にキスをした。



「……じゃあね!」と、弥生はニッコリと笑って、手を振りながら駆け出した。


俺は、弥生の背中を見送りながら、考えていた。


幸せそうに見えても、実際は、そうじゃないことは多いのだ。


結局、弥生は自分が抱えていることに関して、何も話さなかった。


無理に聞き出すことも、ない。


弥生が話したくなったら、聞いてやればいいのだ。



俺は、ポルシェに乗り込む。


センターコンソールにある、グリーンに輝くデジタル時計は、18:05を表示していた。



おっと、ヤバい。


俺は、革のライダースジャケットのポケットから、IDOの携帯を取り出す。


会社に電話を入れて、明日の予定を聞くためだ。



……明日も休み、か。



やれやれ。


世の中は、まだ正月だしな。



ポルシェを東京に向けて走らせながら、俺は途方に暮れていた。


今夜の俺は、いったいどう過ごせばいいんだろう……。