20
俺は、芝浦の埠頭にポルシェを停めた。
ライトアップされたレインボーブリッジが、間近に見える。
あのループをグルグル回ると、目が回りそうだよな……。
俺は、そんなくだらないことを考えていた。
カーコンポからは、Chuck Brown & Soul SeachersのジャージーなGo-Goが流れている。
俺と弥生は、言葉も交わさずに、ただレインボーブリッジを見つめていた。
どのくらいの時間が、経ったのだろうか?
弥生が、突然口を開く。
「……人って変わらないんだよね。結局は、変われないのよ……」
俺は、何も言えなかった。
そして。
その言葉に、俺は胸が痛んだ。
俺は、本当は分かっていたのだ。
陽子のことも。
沙樹子のことも。
そして、その他の女たちにだって……。
きっと、すべてがそうだったのかもしれない。
俺は、昔から何も変わっていないに違いないのだ。
「……ありがとう、ひろさん。優しいんだね」と、弥生はつぶやく。
「……優しい、か……」
俺は、いろいろな女から、その言葉を聞いた。
そして。
その言葉を聞くことに、正直嫌気がさしていたのだ。
優しくしたって、結局女はみんな、俺から離れて行ってしまうのだ。
そして、本当は。
俺は、優しくなんかない。
俺は。
ただ、勇気がないだけだ。