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ブラックミュージック好きの俺だが、今の気分はツェッペリンだ。


カーコンポに入れたカセットテープから、Lemon Songが流れていた。


初めてZepを聞いた中2の秋からずっと、俺が一番好きな曲だ。



首都高環状線を流していた俺は、ふと思い立って横浜に向かうことにした。


こんな夜には、第三京浜に限る。


明日は、休みだった。


もちろん、予定もない。



第三京浜を、120マイルのスピードで走る。


レーダーの反応は、ない。


あっという間に横浜に着いた俺は、中華街を目指す。



その店は、中華街の外れにあった。


正月のこんな時間にやっているのは、確かにこの街らしい。



引き戸を開けた俺は、店の中に入る。


そこは薄暗い、細長いカウンターバーだけの店だ。


スウィートなレゲエが、静かに流れていた。


誰の曲かは、よく知らないが。



「おはよー、マスター。明けましておめでとう!」


俺は、カウンターの一番端に腰掛けながら、マスターに声をかける。


マスターは、口の端だけでニヤリと笑った。



40がらみのマスターとは、俺がこの店を取材しに来たときに知り合った。



突然で恐縮だが、俺は酒を一切口にしない。


元々呑めないクチだった俺だが、酒乱の恭子に酷い目に遭わされてから、酒を口にしないと決めたのだ。