14
相変わらず、陽子からは電話がかかってきていた。
俺は、正直まだ陽子に逢いたくなかった。
しかし。
ちゃんと決着をつけなければならないし、決着をつけたい。
陽子の部屋に置いてある俺の荷物も、持ってこなければならないだろう。
以前、恭子のときは、俺の荷物すべてが宅急便で送りつけられたっけ。
陽子は、いくらなんでも、そんなことはしないだろう。
俺は、陽子と別れるつもりだ。
浮気か本気か知らないが、陽子は他の男と寝た。
それ自体も、もちろんアタマにくるが、結局は俺から心が離れたということだ。
俺には、それが我慢できなかった。
そんな思いを抱いたまま、1994年が明けた。
俺は、年末年始も東京で仕事をしていた。
仕事をしていれば、陽子のことも忘れられる。
そういえば、ここ数年、正月にも広島に帰っていない。
久しぶりに帰ったのだって、じいちゃんの葬儀だったくらいだ。
陽子はきっと、秋田の実家に帰省しているのだろう。
いずれにしても、陽子が帰ってきたら、話をつけるつもりだ。
俺は、真夜中の首都高に黒いポルシェ944を走らせる。
正月の、しかも深夜の環状線はガラガラだ。
カーコンポからは、ツェッペリンのセカンドが流れていた。