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俺は、ずっとリカが好きだった。


だからこそ、俺はリカに冷たくしてしまったのだ。


その結果、俺はリカを傷つけた。


俺は、その罪を償うキッカケを、やっとつかんだのに。


リカは、突然逝ってしまった。



毎日を、後悔なく生きること。


しかし。


刹那的ではなく。


そして。


何かを残すこと。


俺が、生きた証を。



リカが死んで、もう11年も経った。


決意したはずのそんな気持ちは、陽子と過ごすうちに、少しずつ忘れかけていたのかもしれない。


しかし。


奥尻島で、俺はまた強烈にそんな気持ちを思い出したのだ。



約一週間の取材を終えた俺たちは、ようやく動き出したフェリーで江差に向かう。


長い一週間だった。


これほどまでに、早く東京に帰りたかったことはなかった。


目を閉じるとリカの笑顔が、そして陽子の顔が浮かんだ。



フェリーの内甲板には、山積みされた棺桶に入った何十体という遺体があった。


涼しいとはいえ、夏だ。


俺は、今回の現場で嗅ぎなれてしまった遺体のニオイを感じながら、感じていた。


俺は今、確かに生きている、ということを。



江差港に着いた俺たちは、函館空港に向かう。


俺は、タクシーの窓外に流れる森を、ボーッと見ていた。



函館空港に着く。


俺は、左手に巻いた黒いG-SHOCK FIRE FOXを見る。


デジタル表示が、17:45を示していた。


俺は、函館空港から陽子に電話をした。