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俺の姿をテレビで見た陽子は、かなりのショックを受けたらしい。
そのとき陽子は、混乱して激しく泣いたという。
確かに、恋人が危険な場所に向かう姿を見て、冷静でいられるほうが普通ではないのかもしれない。
しかし。
それが、俺の仕事だった。
陽子は、そんな俺を結局、理解できなかったのだと思う。
この取材から帰って来てから、俺と陽子は少しずつすれ違ってしまったのだ。
まだ足下に火がくすぶる青苗で、俺の人生感は変わったのかもしれない。
俺は、これほど多くの死を、目の当たりにしたことはなかった。
半分焼け焦げた、犬の死骸。
そして、津波に巻き込まれた人の亡骸(なきがら)。
自分自身の目や、手で直接感じる、死というもの。
危険な場所で、大きな余震のなか活動していた俺自身にも、なんらかの変化が起こっていたに違いない。
もしかしたら、自分が今、死ぬかもしれない…。
そんな危機感を、感じながら。
交通事故でリカが死んだ、1983年の夏休み。
そのときに感じた、無常感。
人は突然死んで、すべてが終わる。
その思いが奥尻島で、大きく、更なる確信に変化していたのだ。