7
クリスマスに始まった陽子とは、3回目のクリスマスで終わった。
なんとも、皮肉な話だ。
陽子からは、何度もケータイに電話がかかってきたが、俺は話もせずに切った。
話すことなんて、何もない。
俺は、IDOのNを握りしめる。
去年、じいちゃんが死んだ。
じいちゃんがヤバいという話になったとき、俺は携帯電話を持つことにした。
携帯を持っていれば、ロケで地方にいてもすぐに連絡が取れるからだ。
折りたたみの携帯は、あまり好きではないが、まぁ無難な選択だろう。
1993年は、夏に北海道南西沖地震があった。
俺は、地震発生のニュースを聞いて、すぐに会社に駆けつけた。
そして、そのまま北海道に入った。
函館空港から、江差に向かう。
ディレクターとカメラアシスタント、そしてENGカメラマンの俺。
この3人で動く。
被害は、奥尻島に集中しているらしい。
とにかく、奥尻島に入ること。
それが、まず俺たちがしなければならないミッションだった。
江差港は、混乱していた。
報道陣や自衛隊員で、港はごった返していた。
奥尻島に渡るフェリーは、当然動いていない。
奥尻島の港にも、大きな被害が出ているのだろう。
俺たちは、海上保安庁の船に乗せてもらうことになった。
小さなはしけに自衛隊員と一緒に乗り込んで、沖に停泊している巡視艇に向かう。
はしけに乗り込んだ俺の姿が、その日のニュースに流れたらしい。