もう、5年も経つのに……。


結局、俺は同じ目に遭う運命なのか?


タバコの煙が、やけに目にしみた。



俺は5年前、恭子の部屋で男と鉢合わせした。


しかし、そのときは、今回よりもまだマシだった。


今回と違って、その現場を押さえた訳ではなかったのだ。



俺は今、それでもまだ冷静でいられた。


もちろん、やりきれない思いはある。


しかし、起こってしまったことは、仕方ないではないか。


それに。


もしかしたら、俺はキッカケを探していたのかもしれない。


恭子のときも。


そして、陽子とのことも。



あのときの俺は、若かった。


女を寝取られたことに、俺のプライドは激しく傷ついた。


しかし。


陽子とのことは、そのときとは少し違っていた。



俺のプライドなんて、どうでもいいのだ。


俺を愛してくれないならば、俺の気持ちは醒める。


そんな女ならば、こちらから願い下げだ。



俺は、2本目のメリットライトに火を点ける。


タバコを挟んだ右手の指は、震えていた。



俺は本当は、むりやり納得しようとしていたのだ。


そして今、感じていたのは、女に対する恨みのような感情だ。


女は、やはり信用できない。


そして俺は、あのときのように冷徹になっていく。



これで、また自由になれたじゃないか。


俺は、タバコをくわえたまま、歩き出していた。