5
俺は、陽子の部屋に入る。
えっ?
俺は、そのとき背中に冷や汗が流れたような気がした。
なんで、玄関に男の靴がある…?
薄暗い玄関にあったそれは、黒い革靴だった。
そしてそれは、どう見ても男物だ。
そのときの俺は、かなり混乱していた。
まさか、そんなことって……。
部屋の灯りは、消えていた。
ということは、つまり……。
そしてそのとき、俺は聞いてしまったのだ。
そう。
俺しか知らないはずの、陽子のあの声を……。
それは、まさに決定的な事実だった。
しかし俺は、そのとき自分でも不思議なほど冷静だった。
この場に踏み込んだとしても、もうどうしようもない。
俺は、黒いディーパックから、陽子へのクリスマスプレゼントの包みを取り出す。
そして、それを玄関先にそっと置いて、俺は部屋を出た。
近くの公園まで歩いたところで、俺は急にタバコが吸いたくなった。
街灯の下まで行った俺は、メリットライトのハードパックから一本取り出し、ウインドミルのターボライターで火を点ける。
街灯の灯りに沿って上がって行く、青紫色の煙を見上げながら、俺はあのときのことを思い出していた。
そう。
恭子とのことを。