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陽子は、池袋のそばでひとり暮らしをしていた。
陽子が通っていた大学が、池袋にあったからだ。
そして、相変わらず江古田に住んでいた俺にとっても、それは都合が良かった。
俺は、週の半分を自分の部屋でひとりで過ごし、残りの半分を陽子の部屋で陽子と一緒に過ごす。
もちろん、俺の仕事によっては厳密にではないが、そんな感じで俺は陽子と過ごしていたのだ。
国文学を専攻していた陽子は、就職に苦労した。
教職を取っていたが、学校の先生になるのはイヤだったらしい。
それに、先生になるのも、簡単なことではない。
結局、陽子は大手進学塾に正社員として就職が決まった。
当面は、陽子は板橋の教室で、国語の塾講師をやることになったわけだ。
俺といえば、相変わらず取材、取材の毎日だった。
相変わらず、レギュラーのバラエティー番組を持っていたし、その合間には、ニュースやワイドショーの取材にも出た。
陽子が仕事を持ったことによって、俺たちの関係も微妙に変化し始めた。
俺は、好きなときに陽子の部屋に行く。
今までは、何も考えずにそうしていた。
しかし、これからは、そうもいかないよな…。
俺は、自分でそんな判断をして、陽子の部屋を訪れるペースを落とした。