『恋愛小節 1994』 出雲 裕雪
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道は、必ず開かれる。
そう信じてさえいれば、俺は楽な気持ちでいられた。
しかし。
決してすべてがそうじゃないことなんて、俺はとっくに気付いていたのに。
誰かが、こう言ってたっけ。
たまに、終わった途端に横にいる女がウザくなるって。
俺に言わせてみれば、そんなのはいつもの話だ。
俺はまた、女に失望してしまったのかもしれない。
そう。
あの頃の、俺と同じように……。
いつの間にか、季節は夏になっていた。
陽子を失ってからの俺は、昔のように時間をムダに使っていた。
いや。
本当は、俺は時間をムダに使いたかったのかもしれない。
陽子とは、4年前に池袋で出逢った。
レゲエしか、かからないクラブで偶然に……。
陽子とは、半同棲のような形で3年続いた。
大学2年生だった陽子も、社会人になっていた。
そして、環境は人を変えるのだ。
俺は、別にその気がなくても落とせそうな女を見つければ、必ず落とす。
そして、当然のように寝る。
そんなゲームのような夜を、俺は過ごす。
陽子との生活は、穏やかに続いた。
俺は、別に浮気をするでもなく、ただ陽子だけを愛し続けていた。
陽子は、間違いなく俺を愛してくれていたはずだ。
こんな生活が、ずっと続く。
俺は、そんな風に思っていた。
そんな生活に変化が訪れたのは、陽子の浮気がキッカケだった。