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ボーっと、そんなことを考えていると、突然後ろから肩を叩かれた。


「わぁ、久しぶり。奇遇だね!」と、リカは言った。


俺は、リカの声に固まっていた。



浅井里佳は、中学のときの知り合いだった。


いや、知り合いというのは、ちょっと違うか。


実は、もっと深い付き合いだが…。



俺は長い間ずっと、リカとの記憶を封印してきたのだ。


それは、思い出したくない過去だったからだ。



1978年の話だ。


中学2年生の俺は、軟式テニス部で活躍していた。


その部は、男子部員だけでも60人を超える人気の部だった。


大会に出られるのは、レギュラーの6人だけだ。


幸いなことに、俺は新人戦以来ずっとレギュラーだった。



リカは、同じテニス部のエースだった。


健康的に日焼けした、スレンダーな体。


学校一の美少女だと、みんなが認めていた。


しかも、勉強も良く出来る。


みんなの憧れる、完璧な女…。



その頃の俺は、休みの日になるといつも、部の仲間と近所のテニスコートで、試合形式の練習をしていた。


そしてそれ以外は、スケートボードに乗っていた。


どう考えてもケガをしそうなものだが、若さというか幼さというものは、怖いもの知らずだ。


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俺にとってのスケボーは、ただ単純に坂道を下るためだけのものだった。


本来なら、スラロームとか、そんな感じで楽しむのだろうが。


俺はとにかく、そのスピード感に無上の喜びを見い出していたのだ。



家の近くにある小高い山を登って行くと、そこには新しく敷かれたアスファルトの道路があった。


これからここには、たくさんの家が建つのだろう。


そしてそこは、ふだん誰もいない俺のパラダイスだった。


そして俺は、その場所で予想通りというか、ズバリ大ケガをした、というワケだ。



長い直線からの直角カーブで、俺は空を飛んだ。


右手首亀裂骨折、全治2ヶ月。


言い忘れたが、俺は当然右ききだ。



というワケで、俺は2ヶ月間のギプス生活を送ることになった。


当然、テニスは出来ない。


だからといって、部活を休むのはイヤだった。


それは、俺の意地だったのかもしれない。



とにかく俺は、部活を毎日見学した。


そのときに、世話を焼いてきたのがリカだった。


俺のことを、かわいそうに、とでも思ったのだろう。



その後。


俺は、真面目に見学していたことが評価されたのか、キャプテンに選ばれた。


そして、女子のキャプテンは、当然リカだ。