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男として一番心配なのは「今日はアノ日だからダメなの」と、言われることだ。


最初から、大丈夫か?と確認するワケにもいかないし。


しかし今日は、そんな心配も必要なさそうだ。



地下鉄に乗った俺たちは、天王寺へと向かう。


思いのほか、車内は混雑していた。


俺は、美佐の体を支えながら、優しく抱きしめる。


これからの事を考えると、余計にドキドキした。



天王寺に着いた俺たちは、すぐにホテルに入った。


「ちょっと待っててくれる?」と、俺は美佐に声をかけて、フロントへと向かう。



チェックインを済ませた俺は、美佐の座っているソファーに駆け寄る。


「812号室で待ってるから」と、俺は美佐の耳元でささやく。


美佐は、ちょっとびっくりしたような顔をしたが、ゆっくりとうなずいた。



俺は、812号室に入る。


思ったよりも、その部屋は広かった。


とは言え、所詮はシングルルームなので、大した広さではないが。



俺は、セミダブルのベッドに腰掛けて美佐を待つ。


落ち着け、落ち着け…。



そのとき、部屋のドアが小さくノックされた。


来た!



俺は、ひとつ深呼吸をしてドアへと向かう。


オートロックの鍵を外して、ドアを開ける。


すると、滑り込むように美佐が部屋に入って来た。


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「うわぁ、ドキドキしたぁ!」と、美佐は言った。


俺は、後ろ手でドアのロックを掛けながら、もう片方の手で美佐の手を取る。


そして、ゆっくりと引き寄せた。


俺は、美佐をギュッと抱きしめながら、耳元で優しくささやく。


「…やっと、ふたりきりになれたね…」


美佐が、ゆっくりとうなずいた。


俺は、もう一度美佐を強く抱きしめる。


そして、俺は目を閉じた。


美佐の匂いと柔らかさを、もっと感じるために…。



そして俺たちは、何度もキスを繰り返しながら、ベッドに倒れ込んだ。


見つめ合う、目と目。


美佐は、恥ずかしそうに微笑む。


そのとき俺は、確かに感じていたのだ。


やっぱり、美佐しかいない…、と。


俺は今、美佐への強い愛を、確かに感じていたのだ。


そのとき、確かに…。



美佐をシャワーに行かせた俺は、バッグから例のブツを取り出す。


枕の下に、コンドームをひとつ忍ばせた。


これで、ヨシ!



シャワーの音が、止まる。


シャワールームから出て来た美佐は、なぜかキチンと服を着ていた。


そりゃ、いきなりバスタオルだけとか、ガウンだけとか、そんなことはないよな…。


そう思うと、可笑しくなった。



「俺も、行って来るね…」


そう言いながら、俺もシャワールームに向かった。