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「ゴメン、エミ…」
俺は、エミの肩に手をかけて、ゆっくりと押し戻した。
エミは、俺の目を見ながらゆっくりと微笑む。
「やっぱり…。あたし、そんな気はしてたんだ。ヒロユキ、絶対好きな人いるって」
エミは、思ったよりあっけらかんとそう言った。
しかし、エミが強がってそうした態度を取っているのは、すぐに分かった。
「もう逢わないほうがいいよ、きっと…」
俺は、冷たくそう言い放った。
俺は、エミのことはキライではない。
だから、本当はそんな態度をエミに取るのはつらかった。
しかし、それは仕方がないことだ。
「ありがとう。バイバイ!元気でね…」
そう言って駆け出すエミを、俺はただ見送るしかなかった。
そして、それ以来エミには逢っていない。
1年半ぶりに、こんな形で再会するなんて…。
俺は、エミとの腐れ縁を感じていた。
人と話す機会を失っていた俺は、取り戻すようにエミとたくさん話をした。
あれからのことや、友達のこと。
そして音楽の話。
楽しかった。
この東京で、今はエミだけが近しい存在のような気がした。
そして俺たちは、いつの間にか、あの頃のふたりに戻っていた。
いや、あの頃以上のふたりに…。
78
大学生活が、やっと始まった。
そして学内では、クラブ活動の勧誘が盛んに行われていた。
俺は、迷わず軽音楽部のところに行く。
「すいません!入部します!」
俺のその一言で、その場が沸いた。
「第一号!入部決定!」
どうも俺が、初めての新入部員になったようだ。
それから俺は、新入部員にもかかわらず、先輩のフリをして勧誘を手伝ったりしていた。
「エミっ!」
俺は、通りかかったエミに声をかける。
「入るよね、エミも。…また一緒にやるかい?」
エミの表情が曇る。
えっ?
「あたし…うん、考えとくね。じゃあ…」
去って行くエミの後ろ姿を見ながら、俺は感じていた。
やっぱり、俺とはもう音楽はやりたくないんだ…。
俺は、その事実を冷静に受け止めていた。
仕方ない、よな…。
学科が違うと、なかなか偶然には逢えないものだ。
エミと話がしたかったが、それからエミに逢うこともなく時間が過ぎていった。
俺はその夜、公衆電話からエミに電話をかけた。
「…もしもし?」
「俺。いま何してる?」
「ヒロユキ?電話くれたんだ!嬉しいなぁ…」
エミの声は、とても楽しそうだった。
「…ねぇ。ウチに遊びに来ない?一緒にご飯食べようよ!」