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美雪ちゃんの家へは、学校から自転車で30分ほどで到着した。


「ただいま」と美雪ちゃんが言うと、「お帰りなさい」と、美雪ちゃんのお母さんが奥から出てきた。


俺と下村は、どぎまぎしながらお母さんに挨拶する。


美雪ちゃんのお母さんは、思ったよりも怖そうな感じがした。



俺たちは、二階にある美雪ちゃんの部屋に入る。


しかし。


ん、誰もいない…。


美雪ちゃんが、押し入れをノックする。


すると、スルスルっと押し入れが開いた。



「タケシ、何やってるんだよ!」


俺と下村は、小声でそう同時に叫んだ。


タケシが押し入れから、バツ悪そうに顔を出していたのだ。



親と大ゲンカをして家を飛び出したタケシだったが、行く場所がなかった。


やはり頼れるのは彼女だけ、というワケだ。


ウザったいとか、別れるとか言ってたくせに、と俺は可笑しくなった。


しかしまぁ、よくバレずに3日も押し入れに隠れていたもんだ。


まぁ、それはそれとして。



「タケシさぁ、大事にならないうちに家に帰ったほうがいいぜ」と、俺は言った。


下村も俺のとなりで腕組みをしながら、うなずいている。


「ここにいるのがバレたら、ただじゃすまないし、あんまり親を怒らせたら、東京にだって行けなくなるかもよ」と、さらに追い討ちをかける。


タケシは腕組みしたまま、目を閉じて何かをジーッと考えていた。


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タケシは、ゆっくりと目を開いてこう言った。


「うん、じゃあ帰る」


あまりにもアッサリと説得が成功したので、俺も下村も拍子抜けしていた。


まぁ、結果としては良かったのだが。



タケシも入れた俺たち3人は、こっそりと美雪ちゃんの家を抜け出した。


タケシは、さすがに疲れた顔をしていた。


美雪ちゃんが学校に行っている間は、ずっと押し入れに潜んでいたのだ。


考えただけでも疲れる話だ。


タケシもそろそろ、限界だったのだろう。


家に帰ったあとのタケシは、親からムチャクチャに怒られるだろう。


それは気の毒だが、まぁ自業自得だから仕方ない。



俺はタケシに、なぜ美雪ちゃんの家に隠れていたのかを聞いた。


タケシは、それには答えなかった。



下村と別れて、俺とタケシのふたりになったとき、タケシがポツリとこう言った。


「ホントはさ、ただ美雪と一緒にいたかったんだ…」


そっか…。



以前タケシは言ってたっけ。


俺には、絶対遠距離恋愛はムリだって。


人それぞれだと思うが、俺は好きならば遠距離だって続けていく自信があった。


タケシは、やはり美雪ちゃんと別れようとしているのだ。


でも俺は、美佐とはずっと別れない。


そんなことを考えながら、俺は家路を急いだ。