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想像を越えた有紀の行動に、俺の頭のなかは、またまっ白になっていた。


…すごく気持ちいいかも。


いや、でもダメだ!



俺は、有紀の体をもう一度押し戻した。


「…シモとダメだから、こうしたんじゃないよ。ひろ、いなくなっちゃうじゃない。ずっと好きだったの。…ひろ、あたしのことキライ?」と、有紀はまくし立てるように言った。


いや、下村と何もなければ、こんなことしないはずだ。


俺は、そう思ったが、あえて口にはしなかった。



俺は、有紀が好きだ。


有紀が俺を好きなのも、知っている。


でも。



「帰るよ、俺…」


「うん…ゴメン…」


俺は泣いている有紀をひとり残したまま、有紀の家を後にした。



俺の唇と舌には、有紀の感触が残っていた。


これから、俺と有紀、そして下村の関係は、どうなってしまうのだろう?


でも、あれで止めておいて、良かった。


少し残念な気もするが、これで良かったんだ、と俺は思った。



次の日。


俺は、学校に行かなかった。


有紀とのこともあるが、入試の合格発表の日だったからだ。


東京にいるおじさんに、江古田まで発表を見に行ってもらうことになっていた。


発表時間は、午後0時。


しかし、その時間を2時間過ぎても、連絡は入らなかった。


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もしかして、ダメだった?


時間が経つにつれ、俺の不安は増して行く。



もしダメだったら、どうしよう…。


浪人するつもりは、全くなかった。


大阪の大学を受け直すか、それとも専門学校に行くか?



…いや、やはりそれはダメだ。


こればっかりは、妥協してはいけないのだ、と俺は考え直す。


気が付くと、時計の針は午後3時を回っていた。



やはり、ダメか?


いや、しかし。


でも…。



そのとき、電話が鳴った。


俺は、はやる気を落ち着かせながら、受話器を取る。


それは、予想通り東京からの電話だった。


「もしもし……!」



今日の東京は、最近なかったほどの大雪で、交通機関がムチャクチャに乱れているそうだ。


俺は、そんな大雪のなか、わざわざ合格発表の掲示を見に行ってくれたおじさんに、丁寧に礼を言って電話を切った。



本当に嬉しいと、なかなか実感が湧かないものらしい。


俺は、半分放心状態だった。


しかし、だんだんと嬉しさが込み上げてくる。



やった!


本当に合格だ!


俺は、1ヶ月後には東京に行くことになる。


当然俺は、そうなると思っていた。


しかしそれがやっと、本物の現実になろうとしていた。



俺は軽い興奮状態から醒め、少し落ち着いてきた。


ホッとした。


俺は、受話器を取って電話をかける。


一番に知らせるのは、あいつだ。