27
俺は、少し不安だった。
うまくいく恋愛ならば、最初からうまくいく。
今回って最初から、ダメじゃないか…。
俺は、ゆっくりとため息をついた。
そのとき。
エスカレーターを駆け上がってくる、美佐の姿が見えた。
俺は、思わずベンチから立ち上がる。
美佐が俺を見つけて、手を振りながら駆け寄ってくる。
「心配したよ…。どうした?」と、俺は美佐に優しく言った。
「ごめんなさい!事故で電車が遅れちゃって。…ねぇ、もしかして待ち合わせって京都だった?」と、美佐が申し訳なさそうに言う。
さっきまでの不安な気持ちは、もうどこかに消えていた。
「逢えたから、いいじゃん」と笑いながら、俺は美佐の手を取った。
俺と美佐は、手をつないで歩く。
美佐は、白いコートに俺の贈ったコバルトブルーのマフラーをしていた。
かわいい…。
俺はいま、確かな気持ちを感じていた。
美佐が、ずっと好きだった。
そしてこれから俺と美佐が、東京と大阪に離れている状況だったとしても、俺は美佐を離したくない、と強く思った。
俺は今日、美佐に自分の気持ちをちゃんと伝えるのだ。
俺は、ずっと考えていたそのことを、もう一度心に誓った。
俺たちは、国鉄の在来線に乗って京都に向かった。
28
京都へ向かう電車のなかで、俺は激しく緊張していた。
「あのさぁ、美佐…。まだ分からないけど、俺たぶん春から東京に行くと思う」
美佐は、俺の目を見ながらゆっくりとうなずいた。
「…この前、美佐と話して分かったんだ。やっぱり美佐は、俺にとって特別な存在なんだ、って」
美佐は、涙ぐんでいた。
「だから、大変かもしれないけど、俺たち…。俺、ずっと美佐のこと大切にしたいと思ってるから」
美佐は、俺がしていたエンジ色のマフラーに、愛おしそうに触れる。
美佐が、俺の誕生日にくれた手編みのマフラーだ。
俺は、勇気を出してこう言った。
「俺、美佐が大好きだ。ずっと好きでいたいから…」
美佐は、伏せ目がちだった視線をまっすぐ俺に向けて、こう言った。
「ありがとう…。わたしも、だよ。わたしも、ひろが大好き」
美佐が、俺の肩に寄りかかる。
俺は、いま最高に幸せだった。
そして、この幸せが永遠に続くものだと信じていた。
2月の京都は、寒かった。
俺たちは、京都の街を腕を組んで歩く。
美佐の胸が、俺の腕に当たる。
俺は、冷静なふりをしながら、美佐と京都の街をめぐる。
ずっと、ドキドキしながら。
楽しい時間は、あっという間に過ぎる。
午後6時52分。
俺たちは、新大阪にいた。