23

有紀は、俺の誕生日にオシャレなルーズリーフのセットをくれた。


作詞するときに使って、という手紙と一緒に。



俺は、なぜか有紀と気が合った。


有紀は背がちっちゃくて、チャキチャキと明るくて、とてもかわいい子だった。


俺は、有紀のことが好きだった。


そして、有紀もたぶん俺に好意を持っていたはずだ。


しかし。



俺は沙樹にフラれてから、女と付き合うことに興味をなくしていたのだ。


タイミングって、本当に大切だと思う。


タイミングが合えば、俺は有紀と付き合っていたかもしれない。


でも。


有紀はいま、俺のバンド仲間の下山の彼女だった。


受験のさなかというのに、2学期になってから、ふたりは付き合い始めた。



下山が、以前から有紀のことを好きなのは知っていた。


下山から、有紀と付き合うという話を聞いたとき、俺は少しショックだった。


しかし、そんなことを言っても仕方ないが。



俺と下山、そして有紀は3人で良く話をした。


音楽の話もそうだが、くだらない世間話が主だった。


俺たち3人は、そんな微妙な関係だったのだ。



「入試が終わったら、相談がある」と、下山は俺に言っていたっけ。


有紀に関することだろうか…?


俺は、有紀に贈るバースデイカードを書きながら、そんな気がしていた。


24

いよいよ、本番の入試が始まる。


最初は、放送学科の試験だ。


放送には興味があるが、俺はやはり映画がやりたかった。


念のためということもあって、放送学科の試験も受けることにしたのだ。



俺は、武者震いしていた。


いや、でも。


のども痛いし、咳も出る。


こりゃ、やはり風邪だ!


体温計がないから、熱が出ているかどうかは分からない。


でも…。


確実に熱があるに違いない、最悪な状態になっていた。



試験当日。


俺は、フラフラしながら江古田に向かった。


試験を受ける。


頭が、ちゃんと働かない…。


時間ギリギリになって、すべての答えが違っているような気がした。


もしかしたら、ダメかもしれない、と俺は覚悟した。



2日後。


江古田に、一次試験の結果を見に行く。


案の定、俺は落ちていた。


…人生初の不合格というやつだった。


正直、かなりショックだ。


しかし、早く立ち直らなくては!


終わったことは仕方がない。


映画の試験は、5日後だ。


俺はそれまで、もう一度ちゃんと勉強しよう、と思った。



夜、美佐に電話した。


落ちたことを伝えると、美佐は優しく励ましてくれた。


そして。


2月14日、バレンタインデー。


俺たちは、京都で逢うことに決めた。