21
2月に、なった。
そして俺は、ついに東京にいた。
夏休みに、入試の下見に東京に来て以来、生涯2回目の上京だった。
ついに、本番の入試が始まるのだ。
ちょっと風邪気味で、のどが痛いのが気になるが、まぁ大したことはないだろう。
俺は、東京では大塚のビジネスホテルに泊まることになっていた。
狭くて壁が薄いホテルだが、このシーズンは受験生のためのホテルに指定されていた。
一泊8000円は高い気がするが、まぁこの時期は仕方ないか。
しかしこの部屋は、とても勉強しようという気にはならなかった。
何せ、机すらない。
まぁ、いまさら焦ってもどうしようもないから良いのだが。
東京には、2週間ちょっといることになる。
大事な入試だ。
しかし、試験が終われば、美佐に会える。
俺は、この一年がむしゃらに勉強してきたつもりだ。
模試の結果も、すべてA判定だ。
しかし。
油断大敵、というではないか。
それに。
絶対の自信など、持てる俺ではないのだ。
実は、俺なんてそんな性格なのだ…。
いや、おかしい。
そんなことを考えるなんて、俺はいま少し弱気になっているのかもしれない。
俺は、気を紛らわせるために新宿に行くことにした。
22
東京って、どうしてこんなに建物が大きいのだろう?
東京って、どうしてこんなに人が多いのだろう?
広島と比べると、東京はすべてにおいてスケールがデカい。
俺は新宿の街で、新宿副都心の高層ビルを見ながら、そんな当たり前のことを、いまさらながら驚いていた。
立ち止まった俺の左右を、たくさんのひとたちが、早足で通り過ぎていく。
俺は、自分の小ささを実感していた。
三角ビルの根元から、まっすぐに上を見上げる。
果たして。
田舎者の自分が、この東京で本当に通用するのだろうか?
新宿の冷たいビル風に吹かれて、自分の頼りなさに悪寒がした。
俺は、こんな自分をどうにかするためには、いったい何をどうすれば良いのか?を真剣に考えていた。
そしてその答えは、すぐに出た。
というかそれは、俺がいつも考えていて、そうしなければと心に決めていたことだった。
自分が結果を出していくしかない、というシンプルな事実。
そんな当たり前のことを、俺はいま見失っていたのかもしれない。
なるようになる。
しかし、その結果は自分しだいということだ。
俺は、ひとつ深呼吸をして、また歩き出した。
俺は、東口に戻ってマイシティに寄った。
オレンジハウスで、黄色の鍋つかみを買う。
有紀へのプレゼントだ。
4日後は、有紀の誕生日だった。