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俺は、美佐に逢わなければならなかった。
なぜ美佐が、手紙の返事を書かなかったのか?
その理由が、どうしても知りたかったのだ。
沙樹に捨てられた俺は、美佐を信じたかったのかもしれない。
あの頃、俺は純粋に美佐を愛していた。
気持ちの上では違ったかもしれないが、美佐とは体が絡まない、まさに純粋な愛だったはずだ。
だから。
俺は、美佐に捨てられたのではない。
美佐は、そんな女ではない。
俺は、そう信じたかったのだ。
だから。
俺は大阪行きを決めたあとすぐに、美佐に手紙を書くことにした。
久しぶり。
12月の頭に、大阪に行く。
久しぶりに逢わないか?
俺は、そんなシンプルな手紙を美佐に出した。
そして帰って来たのが、この手紙というわけだ。
俺は、美佐から届いたその手紙をもう一度読み返す。
美佐は、俺からの突然の手紙に驚き、そして喜んでいた。
わたしも、ひろゆきくんに逢いたい。
俺は、その言葉を何度も読み返した。
そして俺は、その言葉にやっと救われたのだ。
早く、美佐に逢いたい。
俺は、また美佐に恋をしてしまった。
しかしそれは、長く続く辛い愛の始まりでもあった。
12
12月に、なった。
そして俺は、大阪にいた。
天王寺駅にあるホテルに入ったのは、夜遅くだった。
明日、俺は大学の入試を受ける。
そして、そのあと美佐に逢うのだ。
美佐を見送ってから、3年の月日が流れていた。
俺も美佐も、あの頃のふたりではないのだ。
俺は、そのことが怖くもあり、楽しみでもあった。
俺は、ホテルの公衆電話から美佐に電話をかけた。
手紙のやりとりを始めてからも、俺は美佐と一度しか電話で話していなかった。
美佐の声は、あの頃と変わっていない…。
俺は、それがとても嬉しかった。
明日の夕方、5時半にホテルのロビーで。
俺たちは、そう約束した。
その大学は、天王寺から1時間もかかる、山の中にあった。
俺の第一志望は、東京の大学だった。
そこで、映画の勉強がしたい。
それが俺の目標、いや、当然突破すべき目的だった。
だから、偉そうだがこの試験は肩慣らしという意味もあった。
しかし…。
正直にいうと、俺は美佐に逢うために、この試験を受けたのかもしれない。
もちろん、この試験がまるっきりムダになる訳ではないが。
試験は、順調に進む。
結果も、まずまずだろう。
俺は、4Bの鉛筆を手の上でくるっと回しながら、絵コンテを仕上げていった。