11

俺は、美佐に逢わなければならなかった。


なぜ美佐が、手紙の返事を書かなかったのか?


その理由が、どうしても知りたかったのだ。


沙樹に捨てられた俺は、美佐を信じたかったのかもしれない。



あの頃、俺は純粋に美佐を愛していた。


気持ちの上では違ったかもしれないが、美佐とは体が絡まない、まさに純粋な愛だったはずだ。


だから。


俺は、美佐に捨てられたのではない。


美佐は、そんな女ではない。


俺は、そう信じたかったのだ。


だから。


俺は大阪行きを決めたあとすぐに、美佐に手紙を書くことにした。



久しぶり。


12月の頭に、大阪に行く。


久しぶりに逢わないか?



俺は、そんなシンプルな手紙を美佐に出した。


そして帰って来たのが、この手紙というわけだ。



俺は、美佐から届いたその手紙をもう一度読み返す。


美佐は、俺からの突然の手紙に驚き、そして喜んでいた。



わたしも、ひろゆきくんに逢いたい。



俺は、その言葉を何度も読み返した。


そして俺は、その言葉にやっと救われたのだ。



早く、美佐に逢いたい。


俺は、また美佐に恋をしてしまった。


しかしそれは、長く続く辛い愛の始まりでもあった。


12

12月に、なった。


そして俺は、大阪にいた。


天王寺駅にあるホテルに入ったのは、夜遅くだった。



明日、俺は大学の入試を受ける。


そして、そのあと美佐に逢うのだ。



美佐を見送ってから、3年の月日が流れていた。


俺も美佐も、あの頃のふたりではないのだ。


俺は、そのことが怖くもあり、楽しみでもあった。



俺は、ホテルの公衆電話から美佐に電話をかけた。


手紙のやりとりを始めてからも、俺は美佐と一度しか電話で話していなかった。


美佐の声は、あの頃と変わっていない…。


俺は、それがとても嬉しかった。


明日の夕方、5時半にホテルのロビーで。


俺たちは、そう約束した。



その大学は、天王寺から1時間もかかる、山の中にあった。


俺の第一志望は、東京の大学だった。


そこで、映画の勉強がしたい。


それが俺の目標、いや、当然突破すべき目的だった。


だから、偉そうだがこの試験は肩慣らしという意味もあった。


しかし…。


正直にいうと、俺は美佐に逢うために、この試験を受けたのかもしれない。


もちろん、この試験がまるっきりムダになる訳ではないが。



試験は、順調に進む。


結果も、まずまずだろう。


俺は、4Bの鉛筆を手の上でくるっと回しながら、絵コンテを仕上げていった。