俺は、出航するフェリーを見送りながら、5ヶ月後に必ず美佐に逢いに行こう、と決心していた。


しかし。


俺は、そのあと美佐に逢うことはなかったのだ。


関西への自転車の旅は、次の春休みに決行した。


しかし、仲間数人との旅だったので、美佐に逢いに行くことはしなかった。


それよりも、春の時点で俺と美佐は終わってしまっていたのだ。



俺は、美佐に何通か手紙を書いた。


最初の数回は、すぐに返事が来た。


しかし…。


そのうち、返事が来なくなった。


受験で忙しいんだ…。


きっと、いろいろあるんだ…。


俺は、そう思って納得しようとした。


それに…。


広島と大阪という距離が、中学生にとっては、あまりに遠すぎた。



俺も美佐も、本当は分かっていたのだ。


俺たちは、すぐに終わってしまうって…。



だから俺は、美佐を追わなかった。


こんなもんだって、そう思うようにした。


こうして、美佐とは終わった。



美佐とのことを引きずっていた訳ではないが、俺は高校に入ってから彼女を作らなかった。


モテない訳ではなかったが、なぜかそんな気にならなかったのだ。



高2の秋、ついに俺はある女と付き合うことにした。


山下沙樹。


それが、その女の名前だった。


10

沙樹とは、短いつきあいだった。


高2の秋に始まって、その冬に終わった。


しかも、俺にとって最悪の終わり方で…。



俺の17歳の誕生日の直後に、突然告げられた別れ…。


手編みのセーターとともに届けられた手紙には、緑色の字でこう書いてあった。


「捨てるなり着るなり勝手にしてください」と。



それから、もうすぐ1年が経とうとしている。


沙樹とは、顔を合わせてもお互いに言葉も交わさない、そんな関係になった。


俺は、そんな風にはしたくなかった。


しかし…。


沙樹は、まるで俺の存在が消えてしまったかのように振る舞った。


無視されるのは、つらい。


これでは、俺は死んでしまったも同じではないか…。


なぜ沙樹がそんな振る舞いをするのか、俺には理解出来なかった。


俺は、女への絶望を味わったのだ。


俺は、涙が尽きるまで泣いた。


そして、沙樹の血液型がB型だから、と納得しようとした。


A型の俺とは、どうやっても合わない。


だから仕方ないんだ、と。



そんな気持ちを抱えた1年を、俺は過ごした。


受験勉強に没頭しながら。


それでも止めなかった、ロックバンドの活動に熱中しながら。



受験の一発目は、大阪の大学に決めた。


俺は、大阪に行く。


そして、そこには美佐がいるのだ。