9
俺は、出航するフェリーを見送りながら、5ヶ月後に必ず美佐に逢いに行こう、と決心していた。
しかし。
俺は、そのあと美佐に逢うことはなかったのだ。
関西への自転車の旅は、次の春休みに決行した。
しかし、仲間数人との旅だったので、美佐に逢いに行くことはしなかった。
それよりも、春の時点で俺と美佐は終わってしまっていたのだ。
俺は、美佐に何通か手紙を書いた。
最初の数回は、すぐに返事が来た。
しかし…。
そのうち、返事が来なくなった。
受験で忙しいんだ…。
きっと、いろいろあるんだ…。
俺は、そう思って納得しようとした。
それに…。
広島と大阪という距離が、中学生にとっては、あまりに遠すぎた。
俺も美佐も、本当は分かっていたのだ。
俺たちは、すぐに終わってしまうって…。
だから俺は、美佐を追わなかった。
こんなもんだって、そう思うようにした。
こうして、美佐とは終わった。
美佐とのことを引きずっていた訳ではないが、俺は高校に入ってから彼女を作らなかった。
モテない訳ではなかったが、なぜかそんな気にならなかったのだ。
高2の秋、ついに俺はある女と付き合うことにした。
山下沙樹。
それが、その女の名前だった。
10
沙樹とは、短いつきあいだった。
高2の秋に始まって、その冬に終わった。
しかも、俺にとって最悪の終わり方で…。
俺の17歳の誕生日の直後に、突然告げられた別れ…。
手編みのセーターとともに届けられた手紙には、緑色の字でこう書いてあった。
「捨てるなり着るなり勝手にしてください」と。
それから、もうすぐ1年が経とうとしている。
沙樹とは、顔を合わせてもお互いに言葉も交わさない、そんな関係になった。
俺は、そんな風にはしたくなかった。
しかし…。
沙樹は、まるで俺の存在が消えてしまったかのように振る舞った。
無視されるのは、つらい。
これでは、俺は死んでしまったも同じではないか…。
なぜ沙樹がそんな振る舞いをするのか、俺には理解出来なかった。
俺は、女への絶望を味わったのだ。
俺は、涙が尽きるまで泣いた。
そして、沙樹の血液型がB型だから、と納得しようとした。
A型の俺とは、どうやっても合わない。
だから仕方ないんだ、と。
そんな気持ちを抱えた1年を、俺は過ごした。
受験勉強に没頭しながら。
それでも止めなかった、ロックバンドの活動に熱中しながら。
受験の一発目は、大阪の大学に決めた。
俺は、大阪に行く。
そして、そこには美佐がいるのだ。