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由加は、その店でも目立っていた。


ステーキの味に喜び、ワインの旨さに喜ぶ。


由加はまだ、二十歳になったばかりなのだ。


大人びて見えても、由加は、まだまだ子供だ。



俺は、確かに今日は気乗りしていなかった。


しかし、今日由加とどうなるかが、今後の沙樹子との関係に関わるのだ。


俺は、努めてナチュラルに由加に接することに決めていた。


つまりは、占いのようなものだ。


自然に結果が出て、その結果に従う。


だからこそ、俺はいつものように自然に、由加を落とさなければならないのだ。



由加は、くるくると表情を変える。


笑ったり、ふくれてみたり、感情表現がはっきりしている。


俺は、そんな由加に少しずつ好意を持ち始めていた。


今夜、俺は必ず由加を落とす。


俺は、そう決めた。



俺たちは、ステーキハウスを出て、ポルシェを三宿に向けて走らせる。


車内でも由加は、楽しそうだった。


「由加ってかわいいよな。素直なところが好きだよ」と、俺はカマをかける。


由加は、照れたように、しかしはじけるように笑った。


確かに反応がB型っぽい。


由加がB型に間違われるのが、なんとなく分かった気がした。


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三宿のそのバーは、隠れ家のような雰囲気が心地よかった。


奥まったスペースにあるカップルシートに、俺と由加は落ち着いた。


「由加ってさぁ、彼氏いないの?」と、俺は言った。


「えーっ、ヒロユキさんこそどうなの?って、いない訳ないか…」と、由加は言う。


由加の表情が、少しだけ曇る。


俺に気があるということか…。


「やっぱり由加は素直だね。…俺のこと好きだろ?」


俺は、ズバリと切り出した。


由加の横顔を、熱く見つめる。


由加は、思ったよりも純情だ。


俺と目を合わせられないのか、真っ直ぐ前を見ていた。


少し顔も赤らんでいる。


「俺は、由加のことが気になってるよ。でも、まだ良く由加のこと知らないから、ね」


由加は、何かを決心したかのように、ゆっくりと俺のほうを向いた。


「あたしは…ヒロユキさんのこと知ってるよ。少しは知ってる」


えっ?


俺は、由加の意外な言葉に驚いていた。


俺と由加の視線が、絡み合う。


由加は、なぜか悲しそうな表情をしていた。


「だって…陽子から…。陽子から聞いていたから…」


えっ?


俺は、耳を疑った。


いったい何が起こっているのか?


由加の頬に、一筋の涙が流れていた。