104


「俺は、見ての通りのA型だけど。キミは…キミもAかな?」と、俺は由加に言った。


「ピンポーン!すっごーい!当たりです。よくB型に間違われるんですよ!」


それって、A型としてどうなんだよ?と思いつつ、俺は由加の顔を見る。


由加は、今まで俺が付き合ったことのないタイプの女だ。


瞳に少し似ているかもしれない。


俺は、ケバい女は好きではない。


どちらかというと、普通っぽい娘が好きなのだ。


由加は、決してケバい訳ではないが、雰囲気が派手だ。


正直、あまり得意なタイプではなかった。


撮影場所を変えるため、ロケバスで移動するとき、俺の隣に由加が座ってきた。



「今度メシでも食う?」と俺は、由加の耳元でささやいた。


由加は、ハジけるような笑顔で、うなずいた。



その日俺は、陽子の部屋には行かず、自分のアパートに帰った。


由加を誘ってはみたが、実はそんなには乗り気ではない。


確かに、由加を抱きたいと思う。


そして、確実に落とす自信もある。


しかし、その後のことを考えると面倒だ。


マルボロに100円ライターで火を点けながら、陽子のことを想う。


俺は、陽子を愛している。


確実に、深く。


それは、間違いない。


だからこそ俺は、陽子に対していつものような扱いはできないのだろう。


だから、抱けないのだろう。


そんなことを思っていたとき、突然電話のベルが鳴った。


105


俺は、電話に出ようか、どうしようか悩んでいた。


なんとなく気乗りしなかったのだ。


そんなときは、だいたいロクなことはない。


と思いながらも、俺は電話を取る。


「もしもし…。久しぶり、ひろ。ごめんなさい、なかなか連絡できなくて…」


…沙樹子?


どうして、いまさら…?


俺は、沙樹子からの突然の電話に驚いていた。


俺は、沙樹子とは終わったつもりだった。


当然、沙樹子も俺とは終わったと思っているはずだ。


というか、向こうから離れていったはずなのに…。


俺は、努めて冷静に話をした。


「…久しぶりだね、サッコ。…俺さぁ、おまえと話したいことがあってさ。ちゃんと、ゆっくり話したいと思ってたんだよ、ずっと…」


俺たちはまだ、ちゃんと結論を出していない。


俺は、ちゃんと片をつけたかったのだ。


「…うん。逢おうよ。クリスマスだし、ね」


沙樹子は、あの頃の明るい沙樹子に戻っていた。


俺は、沙樹子を忘れたはずだった。


しかし、こんな調子で話されると心が少し揺れる。


「じゃあ、23日に。ひろ…愛してる」


電話を切った俺は、動揺していた。


ゆっくりと目を閉じると、まぶたの奥に陽子の笑い顔が浮かんだ。